秋の終わりは静かにやってきます。
空気は澄み渡り山並みがきれいに見えます。
紅葉も今が盛りに輝いていますが、まもなく木枯らしが吹き、抜け落ち葉となるのでしょうか。

今年の紅葉は例年に比べ、色が濃く赤が映えますね。
富士山の頂上にも白いものが見えるようになり季節の移ろいを感じます。

さて今回は富士山を横目に目指すのは伊豆半島です。
半島を縦断して伊豆修善寺~湯ヶ島~天城峠~河津町を通り下田港を目指します。
浄蓮の滝は湯ヶ島と天城峠の間にあります。
川端康成の小説「伊豆の踊子」は、川端康成が大正時代、学生時代の伊豆旅行の体験をもとに書かれた作品です。
作品内で浄蓮の滝は通過点であり、滝の名前は登場しませんが、道中で滝を見た可能性は高いのではないでしょうか。
学生と踊子が仲良く並ぶ銅像が滝の入口に建てられていました。

谷底に滝がみえ、水音が周囲にこだましていました。

浄蓮の滝を間近で見るには急な階段を下りる必要があります。
行きは楽ですが、帰りにこの階段を上るのかと思うと気が重くなりました。

階段を谷底まで降りると、白い滝水がコバルトブルーの滝つぼに流れ落ちていました。

皆様は浄蓮の滝の名をどのようにお知りになりましたか?
私は石川さゆりさんの演歌、♪「天城越え」の曲中に登場してからその名前を知りました。
♬ 天城越え
隠しきれない 移り香が
いつしかあなたに浸みついた
誰かに盗られるくらいなら
あなたを殺していいですか
寝乱れて 隠れ宿
九十九(つづら)折り 浄蓮(じょうれん)の滝
舞い上がり 揺れ墜ちる 肩のむこうに
あなた……山が燃える
何があっても もういいの
くらくら燃える 火をくぐり
あなたと越えたい天城越え
この曲は、音域が広くカラオケでは歌うには難曲として知られています。
忘年会に歌ってみたいのですが、高音が出なかったり低音がかすれたり、散々の結果が怖く曲を入れられません。
滝の横には、天城越えの歌碑が置かれています。

滝のしぶきを浴びて全体が苔むした自然石に、「天城越え」の文字プレート、中央には楽譜と歌詞が刻まれたプレート、上部には石川さゆりさんの肖像が石に刻まれ埋め込まれていました。

ここからは、九十九折の天城峠に差し掛かります。
曲にも登場する旧天城隧道(完成は1905年)は伊豆市と河津町を結ぶ歴史を感じる石造りの隧道です。
隧道を抜けると河津桜で有名な河津町で、学生の川端と伊豆の踊子一行は、さらに下田港を目指して歩き続けました。
伊豆半島の先端下田港は、波が穏やかな天然の良港で、風光明媚で歴史的にも有名な場所です。

下田港といえば、ペリー来航(1853年)です。
アメリカのペリー提督が率いる艦隊が浦賀に現れ、200年続いた鎖国を終わらせて、日本が近代国家へ歩み始めるきっかけとなりました。

黒船を模した港の遊覧船が停泊していました。黒船とは黒い煙を上げた蒸気船のことです。
黒船で来航したペリーは、ペリー公園下の鼻黒の地から上陸しました。
この地にはペリーの胸像と錨が置かれていました。

伊豆半島を無事縦断して下田港に到着しました。
小説「伊豆の踊子」では学生の川端康成はこの港から船に乗って東京への帰路につきました。
我々の天城越えは、三島から車を走らせ2時間ほどで終了しました。
