今回は、長野県下伊那郡大鹿村「ろくべん館」の『職人の高い美的センスと技術に支えられる鉄平石』をご紹介します。
南アルプスのふもとに位置する大鹿村は、大鹿歌舞伎や中央構造線、製塩などで知られています。今回施工させていただいた「ろくべん館」は、大鹿村の環境・文化・歴史などを紹介する施設で、リニューアルに伴い建物の一部に鉄平石をご採用いただきました。
余談ですが、館名の「ろくべん」とは、晴れの日に持参する弁当のことで、一人用弁当の「どくべん」がなまって「ろくべん」になったそうです。
【さまざまな、ろくべん】

今回施工した箇所は、建物入口の柱の袴(はかま)部分と、壁面のポイント装飾です。


柱部分には地元の自然石も一部使用し、正面には子どもたちのコメントが描かれた石をはめ込んであります。あとから見返したときに、タイムカプセルのようで面白い企画だと感じました。石工さんと子どもたちのコラボ作品です。


今回の柱は、基本に忠実で、非常に高い技術で施工されています。
一点目は、石積みの基本でもある隅部分が『算木積み』であることです。石の小口が互い違いになるよう交互に小口を出す積み方で、構造的に強固になるだけでなく、目地が一直線にならず、美しい仕上がりになります。
二点目は、隅部分の合わさる面同士の上下の目地位置をきちんと合わせ、面同士の目地をつなげている点です。まるで一体化した『角石』が有るように見えます。
面同士の目地をつなげている点です。
鉄平石は自然素材のため形が不揃いですが、職人が一枚一枚『手切り』という技法で整形しながら張り込んでいきます。
【手切りの様子】

手切りにすることで、石本来の自然な雰囲気を残したまま、美しく仕上げることができます。
三点目は、乱形と配色です。
広い面積で乱張りを表現するのは比較的容易ですが、柱のような狭い範囲、かつ多面体の場合は、1枚貼るだけで面積の多くを占めてしまい、乱張りの美しさを出しにくくなります。
そのため、貼る石のほとんどを手切りで整形する必要があり、時間と労力がかかります。
他にも基本中の基本、「目地はイモ目地(十字目地)にはしない」など、さまざまな配慮と技術が生かされています。


ぜひ鉄平石の現場をご覧になる際は、職人の工夫と技術にも注目していただければと思います。


