粘り強い河川堤防に適用!裏法尻を守る、堤防基礎ドレーン一体工法:ベースドレーン!!

近年の豪雨災害では、線状降水帯の発生に伴う局地的・短時間強雨により、河川の流量が急増し、越水や堤防の洗掘(流水が土をえぐって掘ってしまう現象)による破堤が多発しています。
特に中小河川において、流域の急激な出水と氾濫流の発生により、都市部や農地への浸水被害が深刻化しています。

河川氾濫

国土交通省が構造検討をしています、粘り強い河川堤防は、越水しても決壊しない堤防ではなく、施設の能力を超える洪水に対し、避難のための時間を確保するなど、被害をできるだけ軽減するため、越水した場合でも決壊しにくく、堤防が決壊するまでの時間を少しでも長くするなどの減災効果の発揮する河川堤防であり、危機管理対応としての堤防強化対策としています。

粘り強い河川堤防に求める機能、考えられる構造としまして、国土交通省の粘り強い河川堤防の構造検討に係る技術資料(案)より次のことが示されています。

●粘り強い河川堤防に求める機能
越水した場合であっても粘り強い河川堤防を実現するため、技術検討会では、以下の機能を求めることとしている。
・粘り強い河川堤防を整備したことによって既存の堤防の機能を毀損しないこと
・越水による作用に対して、決壊までの時間を少しでも長くする粘り強い性能(以下「越 水に対する性能」という。)を有すること

●粘り強い河川堤防として考えられる構造の概要
現時点の粘り強い河川堤防の構造としては、大きく表面被覆型(断面拡幅型を含む)及び自立型(自立式特殊堤を含む)に分類される。 

国土交通省 粘り強い河川堤防の構造検討に係る技術資料(案) より)

表面被覆型とは、土堤表面にシートやコンクリートブロック等を設置することにより越水に対する性能を発揮するもので、天端やのり面をコンクリートブロック、法肩保護工、天端舗装、覆土、覆土ブロック、ドレーン工などで被覆することを指します。

比較的知見が整理され、越水に対する性能を有することが一つの条件下での実験で確認されているものとし て、裏法面を「吸出し防止材+コンクリートブロック+覆土」で被覆する構造があります。
粘り強い河川堤防の構造検討に係る 技術資料(案)より河川堤防の図

国土交通省 粘り強い河川堤防の構造検討に係る技術資料(案) より)

裏法の表面被覆ブロックの法尻部は、法尻部の用地にに余地がない場合は、法留工を設置します。裏法尻の勾配が急な場合(1:2.0よりも急な場合)裏法面の表面被覆ブロックは越流水により滑動することが考えられます。その表面被覆ブロックの滑動を止め、表面被覆ブロックが安定性を保つためには、基礎工で受けつもという計算手法が記載されています。 裏法面の表面被覆ブロックの滑動力、主働土圧、越流水によるせん断力を考慮し計算を行うと、大きな基礎工が必要となる場合がありますが、 大きな基礎工となると、裏法尻には道路や住宅などがあって奥行きを取れず、民地境界を侵してしまうので大きな基礎工にできない場合があります。
また、法尻部は通常堤脚水路があるため、大きな基礎となると堤脚水路の設置場所の阻害などの懸念も考えられます。

粘り強い河川堤防の構造検討に係る 技術資料(案)より河川堤防の図
国土交通省 粘り強い河川堤防の構造検討に係る技術資料(案) より)

法尻保護工につきましては、下記のように示されています。

裏法尻の洗掘を抑制するため、法尻保護工を設置する。法尻保護工は、越流水の流向を水 平方向へ変更し、 法尻保護工周辺の局所洗掘を抑制するためブロックにより平場を設けた 構造が望ましく、官民境界が近く平場を設けることができない場合に法留工を設置する。
また、降雨や河川水、越流水が堤防内に浸透した場合でも、浸透水の上昇を抑制し、裏法保護工と法尻保護工の耐力をできるだけ維持できるよう、ドレーン工の設置を検討する。
過去の実験結果 23)より、法留工を設置することで水跳ね効果により法留工近傍 の洗掘の進行が抑制されることが分かっている。 

以下の項目の検討を行うものとする。
・法留工の滑動に対する安定性 
・法留工の転倒に対する安定性
・ドレーン工の構造 
・堤脚水路の構造
・法尻保護工周辺の洗掘を抑制するための工夫

国土交通省 粘り強い河川堤防の構造検討に係る技術資料(案) より)

ドレーン工につきましては下記のように示されています。

堤体土質が砂質土の場合にはドレーン工を設置することを基本とする。 ただし、粘土分が 少なく塑性があまりない粘性土の場合にも、すべりによる変状事例が多いことからドレー ン工を設置するのが良い。  また、透水係数が十分に大きくない礫質土(透水係数が 1.0×10- 4m/s 以下)でもドレーン工による効果が得られることから設置するのが良い。

降雨や河川水、越流水が堤防内に浸透した場合でも、浸透水の上昇を抑制し、 裏法保護工と法尻保護工の耐力をできるだけ維持できるよう、ドレーン工の設置を検討する。

国土交通省 粘り強い河川堤防の構造検討に係る技術資料(案) より)
ベースドレーン(堤防基礎ドレーン一体工法)「粘り強い河川堤防」

プレキャスト基礎ブロックと、ドレーン工を一体化することで自重を重くし、大きな基礎工を設置せずに表面被覆ブロックの滑動力・主動土圧、越流水のせん断力に対して抵抗できる構造体を作ることができます。
その構造体により経済性、施工性に優れた基礎の構築が可能です。

  • プレキャスト基礎ブロックは、法面形状や堤脚水路の高さ等による変化に対応できるようにH500,700,1000タイプを用意しています。
  • プレキャスト基礎ブロックは水抜き穴を有しており、ドレーン部に集水した浸透水を効率的に堤脚水路へ導水可能です。
  • 縦断勾配(最大15%)や曲線区間での施工も可能です。
  • プレキャスト基礎ブロックと表面被覆ブロックは、金具(φ8 ㎜ ) で連結することで、より粘り強い構造を実現しました。
  • ドレーン幅(奥行き)は1.0m ~ 4.0m まで対応可能です。
  • ドレーン幅は堤体の水の排出に必要な幅や表面被覆ブロックの滑動を止める大きさにより決定することができます。
  • ドレーン材は単粒度砕石(20 ~ 40 ㎜ ) を使用可能です。

こちらがドレーン工を組み合わせた完成の様子です。

ベースドレーン完成図

ベースドレーンは、新技術情報システムNETISに登録されています。(NETIS登録番号:CG-240011-A)

新規性及び期待される効果1.どこに新規性があるのか?(従来技術と比較して何を改善したのか?)
・法留工をプレキャストコンクリートとした。
・法留工に水抜き穴を設けた。
・ドレーン部を砕石+シート巻き構造からかご式ドレーンとした。
・法留工とドレーン部を連結一体構造とした。
・法留工と法面ブロックを連結可能とした。


2. 期待される効果は?(新技術活用のメリットは?)
・法留工をプレキャストコンクリートにすることで、工期の短縮、施工性の向上、出来形精度の向上が期待できる。
・法留工が水抜き穴を有していることで、ドレーン部に集水した浸透水を効率的に排水することが可能となり、品質の向上が期待できる。
・法留工とドレーン部を連結一体化することで、裏法尻の安定性が向上し、品質の向上が期待できる。
(一体性確認試験で一体性があることを確認済み)
・法留工とドレーン部を一体化したことで法留工の小型化を実現し、製品単価と施工日数が圧縮されたため、経済性と施工性が向上した。
・法留工と法面に敷設する法面ブロックを連結することで、越流時の堤体の安定性向上により、品質の向上が期待できる。


3. その他
かご式ドレーンに使用している「亜鉛アルミ合金先めっき溶接金網」は下記の特性を有する。

・耐衝撃性
JIS G 3547(H種)相当の鉄線で構成されており、施工時(転圧等)の衝撃に対して、十分な耐衝撃性を有する。
・耐久性
亜鉛-10%アルミニウム合金めっきを施しており、土中や大気中において優れた耐久性を有する。

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