北アルプスを抜けて、長野県と岐阜県飛騨地方を結ぶ安房峠道路は5.6kmのうち安房トンネルが4.4kmを占める自動車専用道路です。
長野県側には松本市、上高地、岐阜県側には飛騨高山、平湯温泉があり外国人観光客にも人気な観光地ルートとなっています。
安房峠道路に通じる長野県側の道路は、観光道路としては険しく、トンネル内で大型車がすれ違うには徐行が必要なほど狭い山道が続きます。
平湯料金所(岐阜県)から北アルプスが望めます。
北アルプスにはまだ残雪がありますね。6月に入り日に日に暑さが増してきて、夏本番が近いと感じさせてくれます。梅雨の晴れ間の青空が広がり料金所を抜けて岐阜県側へ入ると広く整備され緑が眩しい下り坂になります。

両面宿難(りょうめんすくな)をご存じですか?
アニメの呪術廻戦に登場する悪役のキャラクターですよね。
「あらゆる術師が総力を以てしても勝てなかったとされる史上最強の呪術師」の設定です。
岐阜県飛騨地方には両面宿難(りょうめんすくな)ゆかりの地として両面宿難像があちらこちらに置かれています。

高山市丹生川支所前には、高さ2mほどの木製の両面宿難像があります。
裏表に顔が2つある宿難の姿が刻まれていました。
大和朝廷の記録によると、顔が2つあり頭頂部でくっついていてうなじがない。
手足も4本ずつあり、膝の裏や踵がないなどの宿儺の体の特長が残されています。
力が強く俊敏で、4本の手に2振りの剣と2張りの弓矢を使って大暴れした飛騨地方の鬼人とされています。

こちらは、飛騨大鍾乳洞入口に立つ宿難像です。
安房峠道路の料金所から5km程高山市方面に下ると右側に見えてきます。

飛騨大鍾乳洞法入口を右折して5分ほど走ると両面宿難遥拝所(りょうめんすくなようはいじょ)がありました。
(遥拝所とは遠く離れた場所にある神社や信仰の対象を拝むための場所)

両面宿儺は朝廷に従わず、略奪を繰り返したため討伐されたとされています。
しかし、飛騨地方では、龍や悪鬼を退治したり寺院を建てたりなど、地域の英雄として崇拝されています。
大和朝廷の記録や呪術開戦のキャラクターとはイメージが異なりますね。
両面宿難遥拝所(りょうめんすくなようはいじょ)の両面宿難像です。
高さ50cm程の木造で顔が二つ、手に斧を持っていました。飛騨地方では両面宿難を大切に扱っています。

両面宿難遥拝所から50mほど坂を上ると飛騨大鍾乳洞があります。

鍾乳洞入口にはハートの石碑がありました。恋人の聖地と書かれています。

案内版によると、石像のハートの中には二羽のフクロウが刻まれています。
フクロウは不苦労として苦労しないから愛が芽生えるとの思いが込められているそうです。
鐘を鳴らしてカップル、夫婦で記念撮影をすると苦労のない幸せが訪れる。かもしれません。

岐阜県丹生川町にある「飛騨大鍾乳洞」は日本一標高の高い場所(標高900m)にある鍾乳洞です。
1965年に大橋外吉が発見した鍾乳洞で、800m程の見学コースが設けられています。
このあたりは2億5千万年前には海の底であり、サンゴなどの死骸から石灰石が生まれ、年月をかけて溶け出し鍾乳洞を作り上げています。
洞内の気温は、夏でも12℃、外気温30℃から洞に入ると肌寒いと感じます。
探検隊の気分で洞窟に侵入しますが、歩道が整備されており、楽々と歩けました。
天井が低く、幅が狭い場所があり腰をかがめて通ります。

肌寒い洞窟内では、たまに天井から水滴が落ちてきて、一瞬、冷やっとします。
傘を差したいほど、水滴が落ちてくる場所もありました。洞窟内には滝もあり、水が勢いよく流れていました。

青いライトで照らされた鍾乳石が幻想的な雰囲気を醸し出しています。

写真では大きな鍾乳洞に見えますが、実際には1m程の岩の割れ目から奥を覗くような狭い場所です。
白く細長い鍾乳管(ストロー)とよばれる鍾乳石がこの鍾乳洞の特徴です。

大仏の耳と書かれた岩です。耳の穴があり立派な耳たぶがありました。

昭和46年に高松宮殿下が「王冠」とご命名された鍾乳石です。
まるで台座におかれた王冠に見えますね。自然が作り出す造形は想像を超えますね。

命名の記念碑も置かれていました。

両面宿難の伝説の里には、彼の偉業を讃えるように鍾乳石の王冠が輝いていました。
